私の元へ戻ってきた、はずだった……
夫は妻子がいることを隠し、彼女とつき合っていた。彼女から両親に会ってほしいと言われ、ごまかしきれないと思い、彼女の前から姿を消したのだ。夫は終わらせたつもりでも、何がなんだか理解できない彼女は、夫の免許証に書かれていた住所の記憶を頼りに、わが家まで辿りついた。まさか、愛する男に妻子がいたなんて思わずに。
ワーワー泣き喚く彼女。おろおろする夫。そこになぜか冷静な私がいた。「時間をかけて話し合いましょう」。そう言ったのを覚えている。
それから何度も話し合いをし、夫は私の前で彼女に別れを告げた。夫は私の元へ戻ってきた、はずだった……。しかし、ここからが本当の修羅場の始まり。諦めきれない彼女は仕事帰りの夫を待ち伏せし、私は帰ってこない夫を探しにいく。そして2人が会っている現場を見つけて言い争いに。
帰ろうとする夫、引き留める彼女。それを引き裂く私。似たようなことがたびたび起こり、もうクタクタだった。結局、私たち夫婦は離婚を選んだ。そして、さほど日をおかず、夫は彼女と再々婚した。笑ってしまう結果だ。
両親を泣かせ、最初の奥さんを苦しませ、手に入れた結婚生活なのに、私のわがままと自覚のなさから夫をほかの女のもとへ走らせてしまった。挙げ句、私は夫を失い、子どもから父親を取り上げたのだ。
無理やり奪ったから、奪われた。悪いことをしたらちゃんと罰が下る。あれから20年、私は今も一人でいる。神様からお許しをもらえる日は、まだまだ先になるのだろうか? ただこの教訓だけは忘れずに生きていきたい。
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