イラスト:小林マキ
《因果応報》無理やり奪ったから、奪われた。悪いことをしたらちゃんと罰が下る。見知らぬ女が夫の写真を持って家に訪ねてきた時、佐智子さんは――(「読者体験手記」より)

見知らぬ女が玄関に立って、写真を手にしていた。そして、私にこう言った。「この人は、ここにいますか?」と。その写真に写っていたのは、私の夫だったーー。

つき合うつもりなどなかったのに

夫とは、短大時代、バイト先で知り合った。これといって第一印象が良かったわけでも、好みのタイプというわけでもなかったが、休憩時間が重なることが多かったため、自然に会話をするようになった。私が初めて彼を気に留めたのは、食事の仕方がなんとも可愛かったから。食べ物を口に運ぶしぐさが優雅で絵になる感じがした。

その日も休憩をともにしていたら、唐突に彼から食事に誘われた。妻子がいることは知っていた。不倫経験がある女性は、同じことを言うだろう。ほんの軽い気持ちだった、と。私もそうだ。つき合うつもりなどなかったのに……。

でも食事をする間柄になり、いつしか彼の熱意に心が動き出していた。結婚しているのにどういうつもりだろう。そんなふうに疑問を抱きながら、未知の世界への好奇心が生まれてきていた。

とはいえ、このまま一線を越えるわけにはいかない。そんな冷静さだけは持ち合わせていて、彼に私は言った。「遊びでつき合うつもりはありません」と。彼からすればなんと重い言葉だっただろう。しかし、なぜか彼は「遊びじゃない」と真剣に答え、私はそれを信じてしまった。