「管理会社から、『今度は部屋に男を連れ込んで、朝方までどんちゃん騒ぎをしている。本当にやめてほしい』と言われてん。でも、酒も飲めへんあんたらに限ってそんなことはしないと思ったから、それはうちと違います! ときっぱり言ってやったわ」

その頃、姉は公共事業に関連する会社に勤めていたのだが、母は管理会社に「うちの娘は公務員で、出勤時間も早いから、夜中まで人を呼んで騒ぐなんてありえない」と話を少し盛ったという。先方は、前回とはうってかわって強い口調の母に気圧され、少し冷静になったようで、「調べてみます」と電話を切ったそうだ。

母は、「言い返してやったわ!」と誇らしげな様子だったが、前回は一方的に非難されて、よほどめげたのだろう。その後、騒音の原因は別の部屋にあったらしいことが判明。管理会社は、母に非礼を詫び、菓子折りを送ってきたという。

管理会社にとって、店子に注意をすることなど日常茶飯事なのだと思う。しかし、注意する前に事実を確認してしかるべき証拠を示すのが当たり前ではないか。ましてや、遠方に住む母を頭ごなしに叱りつけるなんて。私と姉は管理会社に不信感を抱かずにはいられなかった。

いくら学生の私でも、これが「きちんとした大人のやり方」だとは到底思えない。仕送りを受けている身でなければ、すぐに引っ越しをしたかった。それしか管理会社に仕返しができないから。でも親の負担を考えると、住み続けるしかないと諦め、私と姉は2年耐えたあと、2人で別のマンションに移った。今も引っ越しのたびに、この苦い騒音騒ぎのことを思い出す。


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