低糖質の食事を続けて、将来の病気発症リスクを低減

糖質制限の本来の目的は、糖尿病や肥満などの生活習慣病を引き起こす「血糖値スパイク」を防ぐことです。

「食事を摂ると血糖値が上昇し、それを下げるために膵臓からインスリンが分泌されます。すると、血液中の糖分が細胞内に取り込まれてエネルギーとして利用されたり、余分な糖分を脂肪に変えて体に溜め込んだりするのです。通常であれば、食後に血糖値はゆるやかに上昇し、2時間程度で正常値に戻ります。ところが、糖質を過剰に摂ると血糖値は急激に上昇し、それを下げるべくインスリンが大量に分泌されるため、血糖値は急低下。この乱高下を『血糖値スパイク』と言い、繰り返されると血管の動脈硬化が起こり、心筋梗塞や脳卒中、がんのリスクが高まるのです。さらに近年は、脳細胞を傷つけ、認知症のリスクが高まることもわかっています」

糖尿病や肥満の対策として、これまではカロリー制限、つまり食事量を減らすことが有効だと考えられてきました。

「しかし、血糖値を上げるのは糖質だけ。摂取カロリーを減らさなくても糖質を減らすだけで、血糖値の上昇は抑えられるのです」

「糖質を摂らないと脳が働かない」という情報も耳にします。

「脳が糖質を必要とするのは事実ですが、体には脂質やタンパク質から糖質を作る『糖新生』という仕組みがあるので、糖質制限をしても脳が血糖不足になる心配はありません」

現在、肥満や糖尿病などの兆候がなくても、「40歳を過ぎたら、糖質を制限したほうがいい」と麻生さん。インスリンの働きをサポートする女性ホルモンの分泌量は、40代から急激に減少し、血糖値が上昇しやすくなると言います。

「特に持病がなく、体重コントロールの必要もない人は、糖質を極端に制限するのではなく、ゆるやかな制限でOK。低糖質の食事を続けることで、将来の病気発症リスクの低減につながります。なお、健康診断で要再検査項目がある人や、糖尿病、腎臓や肝臓に問題のある人は必ず医師に相談してください」

 

糖質制限の基本的な考え方

【糖質制限の基本的な考え方】
・主食を減らす(ご飯などの炭水化物は半分にカット)
・主食や副菜を増やす(タンパク質、ビタミン、ミネラル、食物繊維を足す)