イラスト:柿崎こうこ
仲の良い友達との旅は楽しいもの。しかし、移動や食事、お風呂など長い時間をともに過ごすうちに、その人との相性があらわになることもしばしば(「読者体験手記」より)

準備段階から温度差が

「旅行に行きたいね」。20代のころ、友人のアケミと、どちらからともなくそんな話が出た。はじめは国内のつもりだったが、「海外もいいな」「じゃあハワイにしよう」、そんなノリでハワイに行くことに。

アケミは美人で一見派手な印象を与えるが、性格は控えめでおとなしい。以前の職場で気が合って仲良くなり、職場が変わっても遊びに行く仲だった。でも、この旅行をきっかけに、彼女との友情が崩壊することになるとは……。

思えば、旅行の準備段階でその予兆があった気がする。2人とも初めてのハワイ。旅行の計画を立てるために喫茶店で会うことになった。私は張り切ってガイドブックを購入し、旅行会社で手ごろなパッケージツアーのパンフレットを集めていた。そして打ち合わせの日、私は集めたパンフレットをテーブルに並べたが、アケミがパンフレットを出す素振りはない。

「パンフレットは?」。私が聞くと、「あなたが持ってきてくれるだろうと思ったから」と。旅行を楽しみにしていた私は、少し拍子抜けしてしまう。「まっいっか、どっちかが持ってくればいいことだし」。このときは、さほど気にしなかった。その後、旅行プランをあれこれ話し合うが、なんとなく、アケミが積極的ではないような気がする。

私は本当にハワイでいいのかアケミに尋ねてみた。すると、「そもそも海外に行くつもりじゃなかったけれど、あなたが行きたそうだったから」と言う。どうやら私の希望に合わせたということらしい。浮かれていた気分が一気にしぼんだが、アケミが気を使って「でも、いつかハワイも行ってみたかったから」とつけ加えたので、予定通り3泊5日のハワイ旅行を決行することとなった。