好奇心がなくなったら引退します

中村 45年間、秋元さんはなぜ、エンタメの最前線を走り続けることができたのでしょう。

秋元 一つ言えるのは、高校生の時から一貫して、常にリスナー感覚でいることでしょうね。自分がワクワクして、面白いと思わないものを、みんなが面白がるわけがないと思っています。つい最近も、中井貴一さんと鈴木京香さんの『共演NG』(テレビ東京)というドラマをプロデュースしたんですが、「俳優のAさんとBさんは、ちょっと共演が駄目みたいです」と制作から言われたら、その二人に一体何があったんだろうと、にわかに興味が湧きますよね。

中村 めちゃくちゃ湧きます。(笑)

秋元 僕はそういう好奇心とか興味があるものを追いかけて、これからも仕事をしていきたいんです。もしも好奇心がなくなったと思ったら、きっと引退すると思います。

中村 秋元さんにとって、人生とは何だと思いますか。

秋元 僕の人生62年現在で言うと、「目撃すること」だと思う。父に連れられて64年の東京オリンピックの開会式に行ったんですよ。70年、大阪万博も見たし、長嶋茂雄の引退も。テレビでしたけどモハメド・アリとアントニオ猪木の戦いも見ました。仕事でロサンゼルスに行った時、ネバーランドっていうマイケル・ジャクソンの家に遊びに行って、本人に会ったこともあります。

中村 えっ! それはすごい。

秋元 それらは僕が生きて目撃したことであり僕の財産なんです。ひばりさんとの出会いも、筒美先生との日々も。自分が誰と出会い、何を見たかにまさる財産なんてありませんよね。

中村 たしかに。有名か無名かなんて関係なく、誰しもそれぞれの思い出とともに生きている。

秋元 決してスピリチュアルな意味合いではなくて、人間ってね、抗えないものがたくさんありますよ。縁とか運とか、そういうよくわからないものに引き寄せられて僕らは生きていると思うんです。芸能界という不確実性の高い世界においては、特にそう感じます。そんな世界でまだまだ「目撃」を続けて、「ああ面白かったな」と言って終わりたいですね。