脳の活性、ヤセ効果、ストレス解消など良いことずくめ

今回、クラスに出ていた方は皆さん、体が少しずつシェイプされてきたことを実感していると語っていた。いかにも男役という雰囲気を醸し出している音羽夕輝さん(芸名・55歳)も、「会社で毎日行われる朝礼の時も、姿勢を正してジェンヌ立ちをするようになりました」というだけあって、背筋がピーンと伸びていて、一見、30代くらいにしか見えない。

通っていると楽しいから、機嫌がよくなる。これも、多くの生徒さんが語っていたことだ。50代半ばの坂田樹里さん(仮名)は、成人している2人の娘から、「ママ、最近いつも楽しそうだね」と言われたそうだ。坂田さんは娘役希望。「普段の生活では穿けないようなロングのフレアスカートを身につけると、それだけでテンションがあがりますね」

前出の天希さんも、「昔に比べて夫婦喧嘩が減りました。毎日うきうきしているから、細かいことが気にならなくなったし、たいがいのことは『まぁ、いいか』ですませられるようになりました」という。

共通しているのが、「習い始めた頃は振りが覚えられなかったけれど、徐々に覚えられるようになった」という点だ。脳内科医の加藤俊徳先生は、ダンスを習うのは脳を活性化するうえで理想的という。

「振りを理解しようと、まず脳の後方にある理解系が刺激され、身体を動かすように運動系から指令が下ると、脳の前方が刺激され前向きになる。だから脳全体が活性化されます。はじめは振りが覚えにくいのは、脳が衰えていたため。でも使い続けると、年齢にかかわらず、脳は新しく生まれ変わります。また、音楽に合わせて動こうとすると海馬が刺激され、記憶力もよくなる。ものごとの処理スピードが速くなります」。なおかつ、「なりきる」ことで普段の役割意識から解放され、脳の感情系のトレーニングにもなるとか。まさに、いいことずくめだ。

レッスンの最後、タカラジェンヌがフィナーレの時に使う小道具“シャンシャン”を手に、今日習ったシーンを音楽に合わせて通すことに。男役の人は、パンツ姿で颯爽と。娘役の人は、エレガントなフレアスカートで可憐に。「目の前にあるのが、鏡とは思わないで。ここはステージで、向こうには大勢の観客の方がいるとイメージして!」という先生の言葉に、一段とみんなの表情が生き生きと輝く。

75分のクラスが終わった後、うっすらと汗をかいている生徒たちからは、この時間が楽しくてたまらないという喜びのオーラが広がっていくようだった。