孫の世話も一段落し、65歳で「青春アゲイン」

この日のクラスで最年長だったのが、65歳の中林沙織さん(仮名)。通い始めてまだ2ヵ月目なので、芸名も決めていない。「若い時は宝塚をよく見に行っていましたが、結婚・出産の後、夫の海外赴任のため6年間ロンドンで暮らしていたこともあって、ずっと遠ざかっていました」

帰国後は日本語教師の仕事をしつつ、子育ての日々。夫婦そろってゴルフが趣味で、宝塚のことはすっかり忘れていた。子育てが一段落した48歳の時、ゴルフ上達のために体幹を鍛えようと、ヨガを始めた。ただここ5年間は、仕事をしている娘を助けるため、2人の孫の世話で忙しかったという。

「下の孫が3歳になり、幼稚園に入ったのをきっかけに、自分のためにもう少し何かやりたくなって。そんな時、たまたまテレビで『なりきりタカラジェンヌ』のことを知って、そうだ、昔、宝塚が好きだったんだと思い出したんです」

この年齢でついていけるか心配だったが、先生の「大丈夫ですよ!」のひとことに背中を押され、クラスに通い始めた。ただ、今のところ、振りを覚えるのが大変だという。

「スカートをつまもうとすると、足の動きがお留守になる。いっぺんにいくつものことを考えないといけないので、おたおたしてしまいます。ダンスのテンポもけっこう速いですし。でも、歌に合わせて踊るのは楽しいですね。クラスに出ていると、『ベルサイユのばら』を見た時の感動を思い出して、ワクワクしてきます」

動きも姿も美しい先生を間近に見ながらレッスンを受けるのも、とても楽しいという中林さん。

「バレエのレッスンも受けてみたいし、歌も習ってみたい。最近、夢がどんどん広がってきました。65歳にして、“青春アゲイン”という感じです」

娘役を務める中村沙織さん(左手前)と男役の天希玲斗さん(右)。フィナーレの決めポーズもばっちり