イラスト:村越昭彦
「良薬は口に苦し」と言うけれど、周囲の助言や体のSOSには、やはり耳を傾けたほうがいいようで――(「読者体験手記」より)

血便に驚きようやく病院へ

20年ほど前のことです。私は当時、東京の小さな広告会社で働いていました。まだ独身で、会社へは埼玉の実家から通っていたのですが、通勤時間は片道1時間半。昼食代の節約のために自分でお弁当を作っており、毎朝6時起きでした。

少ない社員のほとんどが年配の方で、30代の私が一番下っ端。始業時間は9時半でしたが、9時には到着してお湯を沸かすことから私の仕事はスタートします。デスクの上を水拭きして、お手洗いのトイレットペーパーが切れていないか確認したら、ようやく私が担当している広告制作の仕事に取りかかります。

クライアントの都合に合わせるのが当然ですから、いつも〆切に追われていました。夕飯は食べ損ねることが多く、終電ぎりぎりまで粘って深夜に帰宅すると、入浴してすぐにバタンキューです。面倒なので髪を乾かさずに寝てしまい、朝起きたときにまだ頭がぬれていることがよくありました。

そんな生活なので、当然しょっちゅう風邪を引いてしまいます。けれど、実家の両親は医者嫌いで、子どもの頃から病院に連れて行ってもらった記憶があまりありません。置き薬も用量の半分だけ飲めと言われて育ったので、私は馬鹿正直にその教えを守っていました。