不調を感じても、見て見ぬふり。そんな毎日を過ごしていた私を、ある日かつて経験したことのない腹痛が襲いました。なんと血便が出てしまい、あわてて病院に駆け込むと、ストレス性大腸炎と診断され、即入院となったのです。検査のために大腸に内視鏡を入れられたときは、あまりの痛みに気絶してしまいました。目を覚ますと検査は終わっており、「大腸のあちこちに炎症が起こって出血している」と先生の説明を受け、もしあのまま我慢していたら大変なことになったかもしれない、とぞっとしたのを覚えています。
入院中の1週間は絶食となり、その間は点滴のみ。「ようやく休める……」と、むしろ安堵した私の目に、到底信じられない光景が飛び込んできました。書類の束を手に社長が訪ねてきたのです。「森下さん、ただ寝ているだけじゃもったいないから、よろしくね!」と、手を振って病室を後にする彼を、茫然と見送ることしかできませんでした。
これさえ飲めば気持ちよく眠れる
おちおち休んでもいられず、退院した私はすぐ職場復帰することに。すると、社長の奥さんが心配して声をかけてくれました。そして、「あなたはすぐ風邪を引くわよね。引きはじめにこれを飲めば一発よ!」と、小瓶を差し出すのです。まわりの社員たちも、「たしかにそれは効くよ」と太鼓判を押します。訝しく思いながら瓶のラベルを見ると、それは小児用の風邪シロップでした。
「子どもの場合は少量ずつ1日数回に分けて飲むけれど、大人なら1回1本で大丈夫。翌朝にはケロリよ!」という奥さんの言葉の真偽を確かめる日はすぐにやってきました。悪寒がしたのでそのシロップを1本飲んでからお風呂で温まると、すぐに眠くなって朝まで熟睡し、目覚めたときにはすっかり体調が良くなっていたのです。感激した私は、《風邪の引きはじめに1本》が癖になっていきました。
数ヵ月後、またいつものように激務が続いていたとき、気がついたらのどが腫れて咳が出はじめました。しまった、と思いながら例のシロップを飲み干しましたが、効きが悪くてどうもすっきりしません。私は1週間連続で寝る前に1本ずつシロップを飲み続けました。おかげで体調は回復してきたので、次の日にはシロップを飲まずに寝ようとしたのですが、このとき私はある異変に気づきました。