寝ようとしても、まったく眠くないのです。頭は冴え、蛍光灯の光が目の奥まで届く感覚がありました。「明日も早いのに困ったな」。そう思った私は、眠りにつくためにシロップを飲み干しました。すると、すぐに眠気が訪れ、気持ちよく朝が迎えられたのです。気がつくと、《眠るための1本》がさらに1週間続いていました。

もう風邪は治っているのだし、安くはないシロップを飲むのはやめよう。そう思って寝床に入った夜は、決まって目がぱっちりして、手足の先が熱くなり、まったく眠ることができません。何度もトイレに行ったり、部屋をぐるぐると歩き回ったり、いま考えたら明らかにおかしな行動を繰り返し、ほとんど眠れないまま会社に向かうこともありました。

やがて仕事中に睡魔に襲われるようになると、私はどうかしてしまったのではないかと、さすがに不安になりました。また、ちょうどその頃愛読していた中島らものエッセイで、彼が睡眠薬依存になって錠剤をばりばりかじるシーンを読んで、「まさか私も依存症……?」という考えが頭をよぎったのです。

そこから苦しみの日々が続きました。いきなりシロップをやめるとまた眠れなくなるのではと不安で、少しずつ量を減らしていくことに。減らしてはまた増えて、増えてはまた減らしてを繰り返し、ようやく自然な眠気が戻ってきたのは3週間後でした。

自分で自分が怖くなり、同居していた親にも話せずにいましたが、元の体に戻れて本当に良かったと思います。その後、あのブラックな会社を辞めることを決意して転職し、新しい職場で現在の夫と出会って結婚しました。今は無茶な働き方はしていません。

実を言うと、《風邪の引きはじめに1本》は、今でもやっていますが、絶対に長く飲み続けないようにしています。もう二度とあんな思いはゴメンです!


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