ということを、昨年『真田丸』を観ながらずっと考えていた。あんなに思いやりがあって研究熱心で自己犠牲を厭わず笑顔のチャーミングな(あ、それは堺雅人さんだからか)真田信繁でも負ける。どう見たって家康さんより善良だったのに。選挙だったら絶対信繁さんに入れたのになあ。

しかし勝った徳川家康のおかげで沼地だった江戸は驚異的な発展を遂げ、オリンピックを2回もやろうとしている。結果的に我々日本人にとって良かったのか、そうでないのか?

新幹線で大阪へ向かう途中、進行方向右手に座るのが好きだ。名古屋を過ぎて滋賀県へ入る少し手前で窓の外を眺めていると、数年前まで「関ヶ原古戦場跡」という看板が見えた(最近なくなったのでどうしたのかと調べたら、2020年に向けてリニューアル工事中らしい)。長閑な丘と野原の連なりに、善でも悪でもない何万もの魂が眠っているのだと思うとなんだかきゅんとなる。

彼らに言わせれば、ちょっとそこまで出かけて行って紙にささっと殿様の名前を書くだけで天下が決するとはなんとお気楽なことよ、大雨くらいでぶつぶつ言いなさんな、というところだろう。400年前なら、この一票は命がけだったかもしれないのだから。

鈴木保奈美さんの連載「獅子座、A型、丙午。」一覧

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