「片づいている」の尺度は人それぞれ。ゆえに掃除をめぐる攻防はときに人間関係を壊しかねない事態にも発展して――(「読者体験手記」より)
天敵は度を越したきれい好き
私は自他ともに認める、片づけられない女だ。むしろ、部屋は多少散らかっているほうが落ち着くといっていい。手を伸ばせば必要なものが調達できる、それが理想の空間だ。私の部屋を他人が見れば、《混沌》にしか見えないかもしれないが、ちゃんと定位置に配された完璧な部屋なのである。
そんな私の天敵は、同じ屋根の下に住む夫。あろうことか、夫は度を越したきれい好きなのだ。眼鏡、時計などの小物はもちろん、服も本も、あるべき場所にきちんと収納している。対照的な性格の私たち夫婦は、整理整頓を巡り、衝突を繰り返してきた。結婚して25年、夫婦史に残る大喧嘩が2度勃発している。
まず1度目は10年ほど前のこと。私には著書を出すという子どもの頃からの夢があり、毎日ワープロのキーをチマチマと叩いていた。目標は原稿用紙200枚。もちろん印税生活に憧れていたけれど、自費出版でも構わない、とにかく本が出したかった。夢のために頭をひねり必死でキーを叩く日々。内容は、主婦が独学で英検1級に合格し、ささやかではあるが、英語の仕事を少しずつこなしていることを綴ったエッセイだ。