ショーロクラブ with ヴォーカリスタス 武満徹ソングブック ‐コンプリート‐ 日本コロムビア 3700円

武満徹生誕90年によせて

武満徹の生誕90年にあたる今年、現代音楽の作曲家であった武満が折にふれて作曲したポップスの歌を集めたアルバムが発表された。題して《武満徹ソングブック‐コンプリート‐》。武満が書くメロディの美しさ、翼をもったような自由な展開、深い呼吸を誘うソングの数々に、ショーロクラブと7人のヴォーカリストたちが現代の生命を吹き込んだ。ショーロクラブがバンドリン、ギター、コントラバスという少ない音で奏でる広い音楽空間が、武満の楽曲によく合っているのだ。

それぞれのシンガーが個性的だが、現役の医師でもあるアン・サリーの澄んだ歌声が心にあかりを灯す。〈小さな部屋で〉は温かい家庭を想起させて、聴き手の心も温める。ずっと聴いていきたいアルバムだ。

ショーロクラブ with ヴォーカリスタス
武満徹ソングブック ‐コンプリート‐
日本コロムビア 3700円
バンガロー アブストラクト・メッセージズ スタジオソングス 2500円

21世紀のジャズ・サウンドが誕生

バンガローの新作《アブストラクト・メッセージズ》が完成した。佐藤浩一(p)、大村亘こう(ds)、オーストラリア在住のマイク・リヴェット(sax、エレクトロニクス)の3人からなるユニット。コロナ禍を受けて、佐藤と大村が演奏した音源をマイクに送り、マイクがそれを加工し、ミックスしてアルバムが完成した。いつもならやらないそんなプロセスがプラスに働き、21世紀のジャズ・サウンドがここに生まれた。

抽象的だが、日常から乖離しないメッセージが込められ、サウンドが聴き手を自由や平和へと導いていく。エレクトロニクスを多用しているが、手触りはオーガニックだった。そして、未来への希望に満ちていた。バンガローの今後の活躍に、期待している。

バンガロー
アブストラクト・メッセージズ
スタジオソングス 2500円