「私たちの体には、ウイルスなど病原体の侵入を防ぐ二段構えの防御機能があるのです。城とそれを囲む城壁にたとえるとわかりやすいでしょう。」(宮坂さん)

自然免疫と獲得免疫

赤江 感染予防や重症化しないために免疫が大切なのはわかっているのですが、自分で「免疫」と口にしながら、そもそもどういうものかは理解できていないんです。

宮坂 文字通り、病を免れるための体の機能です。自然免疫と獲得免疫の違いをご存じですか?

赤江 いいえ、わかりません。

宮坂 私たちの体には、ウイルスなど病原体の侵入を防ぐ二段構えの防御機能があるのです。城とそれを囲む城壁にたとえるとわかりやすいでしょう。まず皮膚の表皮、鼻や喉や腸管の粘膜、涙などが城壁となって敵の侵入を防ぎます。城壁を破って病原体が入ってきたら、次は城門の門番たちが出動。門番の役割をするのが血液の中の白血球です。その一種である食細胞が病原体を食べるなどして排除する。これが「自然免疫」。生まれつき持っている免疫機構です。

赤江 だから体の調子が悪いと白血球の数値が高くなるんですね。

宮坂 それは病原体が体内に入り込んだ時に起こる状態です。自然免疫を突破して病原体が侵入すると立ち上がるのが「獲得免疫」で、城の王様が指令を出し、兵士たちが戦うイメージ。白血球の一つであるリンパ球が発動し、抗体を作って病原体を攻撃、あるいは細胞の中に入り込んだ病原体を排除します。

赤江 一度感染すると抗体ができるというのは、獲得免疫の仕組みなのですね。

宮坂 その通りです。獲得免疫は、病原体を識別する高度な免疫で、一度出会った敵を覚えているのです。この記憶は一定期間、体の中に存在し、再び同じタイプの敵が侵入してきた時には、たとえば「インフルエンザだな」と識別し、リンパ球が素早く発動する。そのため、一度感染した病原体が次に入ってきたときには未然に防ぎやすい。この免疫のメリットを利用したのが、病原体を模して作られるワクチンです。

赤江 私も先日、インフルエンザのワクチンを打ちました。

宮坂 実はインフルエンザワクチンの有効率は高くなく、接種しても罹患する可能性はありますが、重症化を防げます。また、ほかの感染症にも罹りにくくなると考えられます。

赤江 私の場合、ワクチンを打ったあとに少し体調が悪くなりました。そういうケースもありますか。

宮坂 ワクチンによって免疫が強く刺激されますから、もともと体調がよくないと、局所の腫れや痛み、発熱がふだんより起きやすくなり、不快に感じることがあります。でも、それは病原体を追い出すために必要な反応なのです。