創業者の哲学は、「法人」の人格につながっている

よって、僕のインタビューは東さんがなぜゲンロンを創業し、そしてゲンロンで起きた一つ一つの危機や出来事に対し、その場でなにを考え、どんな行動を取ってきたのか、その理由を深く聞くことに終始した。人間を知るということは、その人固有の哲学を聞く行為でもある。これは「法人」にも言えることだろう。創業者の哲学は、「法人」の人格や哲学にもつながっている。

「東さん、また同じ失敗じゃないですか!」「もうちょっと詳しく、失敗で学んだことを教えてください」といった調子で、時にズケズケと、時に生意気な言葉も重ねながら、東さんが、そしてゲンロンがいかに哲学を実践してきたかを聞いていった。

 

「失敗からこそ立ち上がる希望もある」

インタビュー中、東さんは何度も「こんな失敗談で本になるのかなぁ」「また凡庸な結論なんだよ」と言っていた。その度に僕は「絶対に本になる」と返してきた。現実は、常にフィクションのように、あるいはうまく物語化に成功したノンフィクションのように綺麗には着地しない。

しかしながら、現実は平凡なフィクション以上に生々しい何かを伝える。合理的な正解を求めることが、非合理な結末を迎え、さほど重大だと思っていなかった決定が、まったく予期せぬ結果を生み出すこともある。無駄だと思っていた何かが、ある時に別の出来事とぶつかり、思わぬダイナミズムを生み出すこともある。この本で記されているのは、現実のなかで繰り返し起きる逆説だ。

きっと多くの人が経験してきたことが、ここに言語化されているはずだ。

「哲学はあらゆる場所に宿ります。だから読者のみなさんの人生のなかにも宿っています」(本書より)

東さんの誠実な語りは、きっと多くの人の哲学を引き出すだろう。僕はインタビューを重ねながら、こんなことも考えていた。希望は常に成功ばかりからは生まれない。逆説的だが、失敗から立ち上がる希望もある、と。