斎藤 現在の医学では、双極性障害は良くはなるけれど、寛解するのは本当に難しいとされています。きれいに終結したという論文はほとんど読んだことがありません。しかし恭平さんは治ったと感じているのですよね。
坂口 今の実感では完治です。というか、違う段階に入ったと思う。今も躁うつの波はあるんですよ。でもその時の状態によって、休憩したり、水を飲んだり、体の動きを合わせることで、普通に日常生活を送ることができる。躁のエネルギーは、やり方によっては非常に有益に使えますし。
斎藤 躁うつ病は気分障害なので、治療は気分を平坦にするしかないと普通の医者は考えます。安定剤を使い、「低め安定」にエネルギーを削ぐ方向です。恭平さんのように躁うつのエネルギーをうまく流すというか、発揮する方法を自分で開発しようとした人は前例がありません。
坂口 ある時、親友が「君は治るよ」と言ってくれたことがあって、この言葉にもすごく背中を押されました。だから「治る」という感覚を、頼むからみんな持っておこうよと言いたいんです。
斎藤 医者自身も、双極性障害や統合失調症は完治しないと思い込んでいるところがあります。初診で「一生付き合っていく病気なので頑張りましょう」と言うことが患者への親切だと。しかしそうした既成概念にとらわれすぎないことも大切ですね。恭平さんの開発した方法は、治るという方向に道を開いたかもしれません。
「治療はオーダーメイドだ」
坂口 実は僕、一度医者になってみたいのです。医師免許なしで医者になる方法ってないですか。
斎藤 医者は制約が多いから、つまらないですよ(笑)。今のままのほうが面白いでしょう。
坂口 そうですか。
斎藤 2万人もの相談を受けている実績があるし、結果も把握しながら進めているから、すでに通常の精神療法の活動とそんなに変わらないですよ。セルフケアで躁うつから脱却しつつある事実も強力だし。こういうケースが一例でもあれば、それはエビデンス(科学的根拠)になる。方法論としてもけっこう良いと思います。
坂口 ありがとうございます。