総理大臣は自分たちの手で変えることができる?

――『当確師』の続編にあたる新刊『当確師 十二歳の革命』も、今月発売されました。選挙コンサルタントの聖に課せられたミッションは、「総理大臣を引きずり下ろすため、選挙区で落とす」というもの。大胆で驚きました

選挙コンサルタントの物語を書くうえで、一番の醍醐味は、国のトップである現職の総理大臣に勝つことです。もちろん現実問題として、知名度も実績もある総理大臣に勝つのは難しいでしょう。それでも、「現実ではありえない」という考えに挑戦してみることこそ、小説のひとつの醍醐味だと思っています。『十二歳の革命』は、「小説家の一人の頭の中でできるのに、なんで現実は小説を超えられないのだろう」と考える人が出てくればいいな、という気持ちで書いた作品です。

いまの日本人は、政治に対する無力感というか、「別にいまのままでいいかな」「どうせ何も変わらないだろう」というあきらめに近い感覚を持っていると思います。確かに、いまは自民党一強の時代ですし、自民党の国会での議席数を減らして、いまの政治の方針を大きく変えることは難しいかもしれません。でも、総理大臣をその座から下ろすことに関しては、実はあまり難しくないのです。なぜかと言うと、総理大臣は国会議員でなければいけないから。つまり、どれだけ与党が多数派であったとしても、我々の投票によって総理大臣を選挙区で落とし、さらに比例復活させなければ、その人は総理大臣ではいられなくなる。「総理大臣は自分たちの手で変えることができる」という一つの提案をしたかったのです。

真山仁さんの『当確師』と続編『当確師 十二歳の革命』中央公論新社

――タイトルにもありますが、今作では12歳の少年が、現役総理の選挙区で開かれたイベントで総理を問い詰めるシーンが印象的でした。この出来事がきっかけで、メディアや世論が動き、盤石だった総理大臣への支持が揺らぎ始めます

選挙権のない子どもが、政治家に対して「この国はおかしい」と言った。それに対して、周囲の大人がどう反応するのかをきちんと問いたかったのです。

少年の主張は、純粋に自分が親しんで大切にしている里山を守りたい、というものです。今作の取材では、信州にホタルを見に行ったのですが、案内してくださった方が「私はこの場所が本当に好きで」と何度も繰り返されていて、「あぁ、この方は自分の住む場所とそこに住むホタルをすごく大事にされているな」と感じたのです。

政治家が語る大きな話は、国にとっては大事かもしれませんが、地方で生活する人にとってはむしろどうでもいい話だったりする。彼らには目の前の生活が何より大切だからです。それを純粋な子どもの目線のまま伝えることで、より主張が際立つのではと考えました。