乱れた生活リズムを取り戻す
タッチングケアでもう一つ大切なのが、「リズム」です。日々の生活で、つい家族の都合を優先してしまって自分のペースで行動できない、というようなことはありませんか? その状態が長く続けばストレスが溜まって脳が疲労し、体にも心にも悪い影響を及ぼすのです。
規則的なリズムは、心を安定させる作用のある脳内物質・セロトニンの分泌に深く関係しています。規則正しい生活はもちろん、友だちとおしゃべりして食事をするのも、ジムに通って運動するのもリズムを作る大事な要素。でも、コロナ禍でそうした習慣が急になくなってしまったという方もいるでしょう。すると体内のリズムが崩れ、セロトニンもうまく分泌されず、心が鬱々としてしまう。手で「心地よいリズム」を作り出し、皮膚から脳に伝えれば、本来のリズムを取り戻すことができるのです。
さらに、優しく触れるだけで、「幸せホルモン」と呼ばれストレスの軽減や自然治癒力を高める効果が期待される脳内物質・オキシトシンの分泌も促します。オキシトシンは信頼できる人との会話やスキンシップ、ペットやぬいぐるみとの触れ合いのほか、誰かを大切に思うだけでも分泌が促されることが最新の研究でわかってきました。ですから、1人でケアするときも、「頑張ったね。大丈夫」と自分を労わる気持ちを込めるといいでしょう。
タッチングケアのいいところは、いつでもどこでも、1人でもできること。リラックスしたいときだけでなく、不安や怒りに襲われたときにも有効です。片手をもう片方の手でゆっくりさすりながら、フーッと息を大きく吐くだけでも、気持ちを落ち着かせることができます。
毎日の生活に取り入れるのなら、夜、お風呂やベッドの中などリラックスできる場所で行うといいでしょう。私はテレビを見ながらやったりもします。ぜひ、次ページで紹介する「基本のタッチング」から試してみてください。
今回はセルフケアの方法を紹介しましたが、「誰かにやってほしいなあ」と感じたら、かなり心身に疲れが溜まっている証拠。無理をせず、家族やアロマセラピーのサロンなど、人の手を借りてくださいね。
効果を引き出すコツは
以下の3点を心がけて
マシュマロがつぶれない程度の力が理想。ペットやぬいぐるみをなでるイメージで行うといいでしょう
成人の安静時の脈拍数(1分間に60〜100回程度)が目安。「ドクッ」という1回の拍動に合わせて手を動かしましょう
タッチングは「往復」の動作の繰り返し。押し出すときは痛みを感じない程度に強めに、引き戻すときは弱めに