「400年続いてきた歌舞伎を、自分が役者をしている間に終わらせてはいけない、という気持ちがあった」(幸四郎さん)

休演中に生まれた図夢歌舞伎

幸四郎 休演中だった6月から7月にかけては、Zoomに着想を得た「図夢(ずうむ)歌舞伎『忠臣蔵』」を配信したのだけど、撮影時は、これが最後かもしれないと思って演じていました。一方で、400年続いてきた歌舞伎を、自分が役者をしている間に終わらせてはいけない、という気持ちもあって。

猿之助 全5回のうち、僕も3回目と5回目に声をかけてもらって嬉しかったです。

幸四郎 いつ芝居の幕が開けられるのかわからない、開くのかどうかさえわからない時にやっと見つけた、お芝居をする唯一の場だった。あの時は、松竹の若い有志の方たちが協力してくれました。

猿之助 撮影した映像だけでなく、リアルタイムの映像を組み合わせたライブ配信でした。対面で打ち合わせもできないなか、みんなで知恵を出しあって。僕は、白粉塗れるだけでも幸せだった。

幸四郎 何が嬉しかったって、撮影の時に大道具さんや衣裳さんと会えたことだね。彼らもすごい技術を持っているのに、それを発揮する場がなくなって。みんな惜しみなく協力してくださった。

猿之助 あの経験を通して、図夢歌舞伎は歌舞伎ができない時に間に合わせでやるだけのものではないとわかったし、舞台と映像、両方で進んでいくべきだと確信しました。ただ続けていくには、映像作品としてのクオリティを上げていく必要があるな、と。

幸四郎 そういう思いから今回実現したのが、「図夢歌舞伎『弥次喜多』」だね。