イラスト:山崎のぶこ
家族といえども、理解できない行動を取る人は困りもの。単なるクセで終わればいいのですが、時には周囲に飛び火することもあるから油断できません――(「読者体験手記」より)

キツく閉めると、パッキンがだめになるって?

「またお風呂の蛇口、しっかり閉まってなかった!」。朝一番、私の怒号が鳴り響く。寝室から出てくる夫に、私は鋭いにらみをきかせながら言った。「あれ、ちゃんと閉めたはずなんだけど……」「閉まってないから、ポタポタするの! うちのお風呂は窓がないから、蛇口が閉まってないと、いつまで経っても浴室が乾かないじゃない」「ごめん、これから気をつけるよ……」「何百回、同じこと言わせるのよ!」。私はまくしたてる。

すると何かを察知したのか、いつもはゆっくり身支度をする夫が、まるで疾風のごとく準備し、コソ泥のように「行ってきま~す」と言い、出て行ってしまった。仕方ない、あとで怒りの「説教メール」を送るとするか。

わが家は築20年の賃貸マンションなので、浴槽の蛇口は今ではめずらしい古いタイプである。私は性格的に、きっちり閉めたか何度も確認するのだが、夫はいつもユル閉めだ。

「あまりキツく閉めると、パッキンがだめになる」というのが夫の言い分。だめになっているのは、あんたじゃないのか――。閉めすぎないことと、閉まっていないことの違いが、何度言ってもわからないようだ。