ふと目に留まったのは

「へぇ~、結構強く洗うんだね、なるほど~。歯ブラシも使うんだ~。さすがだよ」
夫の反応は、一見理解したかのように聞こえるが、まったく聞いていない。その後も洗い残しがいっこうに改善されていない現実がそれを物語っている。私が怖くて反論できない気持ちも理解できるけれど、毎日、小さな裏切りを受けているような私の身にもなってよ。私だって重箱の隅をつつくような言い方はしたくはないのだ。

そんなことをボーッと考えている時、ふと目の前のグラスの縁の汚れが目に留まった。自慢じゃないが、私が洗った食器に汚れが残ることは年に1度あるかないか。

「グラス、ちゃんと洗えてなかった……」

私は落ちこんだ。隣の部屋で一部始終を見ていた夫が、すぐさま嬉しそうにやってきた。「人間そういう時もたまにはあるよ!」と、ニコニコしながら励ます。不覚にも私の気持ちは軽くなってしまった。

夫が「いい天気だからどっか行く?」「行かない! 今日は衣替えする!」「そっか~、キューイむこうか?」「だから、キウイだよ! 何度言ったらわかるの。まったく!」。

能天気な夫の反応にいつもイライラしながらも、たまにはほだされることもある私であった。


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