純粋学問をどこまで追求すべきか
また、以下も同書で指摘したことだが、日本の大学教育には旧帝国大学の伝統が未だに残っていて、純粋学問を研究・教育するのが大学の役割と大学人側が思っており、旧来の学問(法律、経済、文学、理学など)を偏重し、社会に出て働くときに役立つ実学をさほど教えない傾向もみられる。
その例外は医学・薬学・工学・農学で、これらの学部では卒業後の仕事に役立つ学問を教えている。問題はこういった学部で学ぶ人の数がそもそも少なく、大半は先に述べた伝統的な学問の学部で、さほど勉強もしないまま卒業していくことにもある。
しかし大学進学率が5割以上に達し、その多くが研究者などではなく、一般の会社員などとして人生を送ることが予想される現在、純粋学問を果たしてどこまで追求すべきか、急ぎ、再検討が必要だろう。むしろ、大半の学生には、社会に出てからうまく仕事をこなせるような実学を施すことをより意識するべきなのではないだろうか。
そうすることで、無味乾燥な学問を勉強して意欲を失うかわりに、卒業後の仕事のことを考え、真剣に勉学や技能訓練に励むようになると予想できるからだ。また学生側も、そこで蓄積した能力や経験、適正の見極めのおかげで、社会に出た後などに、求められる力と自らの力とのギャップに苦しむ機会がかなり減るはずである。