再就職を試みるが…
従弟が脳梗塞で倒れたのは、その半年後だ。
彼の妹によると、貸金業を畳んだのち、従弟は再就職を試みたらしい。観光バスの会社に、面接へ行ったそうだ。だが、年齢もすでに50歳を過ぎており、今まで人に雇われた経験もない。ずいぶんと横柄な態度で面接を受けたようだ。それでは、どこも雇ってはくれないだろう。
従妹に「まずそこを直さないとね」と言うと、「それだけじゃないのよ。兄さん、一杯呑んで行ったんだって」と呆れ顔で続けた。
「えー?バス会社の面接に、お酒を呑んで行ったの?」
前代未聞だ。
「そりゃ落ちるわ。お客さんを乗せて飲酒運転なんかして、犠牲者を出さなくてよかった」
私は思わず、笑ってしまった。
きっと彼は、面接に通る気もなかったのだろう。人に使われて、汗を流すのがいやだったのだ。