栄華を極めた彼の孤独な末路

そうして彼は今ベッドに横たわり、預金すらない生活を送っている。半身不随なので、障害年金と親の少ない年金を頼っての暮らし。

妻はと言うと、彼が倒れる3ヵ月前に急性心不全で亡くなった。きっと、飲酒とストレスが原因だろう。減りゆく貯金を見ては酒に溺れ、かといってパートに出ることもせず、不摂生を繰り返したのではないか。亡くなったときに彼女が所持していたのは、身につけていたパジャマだけだったという。

幸いにして、2人の子どもたちはすでに独立していた。アワビやイクラをさんざん食べさせてもらい、溺愛された彼らだが、父の元に足しげく通うことはないらしい。

栄華を極めた彼が、今はひとり。時折、従妹が見舞いに行くか、私が差し入れをするくらい。彼が持っているものは、時々届く雑誌と、パジャマ数着だけだ。

今でも、弁護士から「グレーゾーン」で取りすぎた利息の返還を求める督促状が届くらしい。それがつらいと彼は言っていた。


※婦人公論では「読者体験手記」を随時募集しています。

現在募集中のテーマはこちら

アンケート・投稿欄へ