末富「福枡」

節分の豆まきの
枡をかたどった薯蕷饅頭。
厄を祓い、招福を願う
縁起をかついで

京都の節分といえば、吉田神社の節分祭が有名。

参道に数多くの露店が並び、境内には京都のさまざまな老舗が協賛するくじ引きなどもあって、家族連れや友人仲間などの善男善女の参拝客で賑わいます。社務所には彩色を施した大小の枡が並び、節分の縁起物として人気があります。

「福枡」は、節分の豆まきにちなんだ菓子で、枡のかたちの焼印を捺した薯蕷(じょうよ)皮の中に白小豆の餡が入っています。茶の湯菓子の名店として知られる末富の生菓子といえば、手間のかかるこし餡が使われているイメージが強いのですが、この菓子にはあえてのつぶ餡。枡になぞらえた皮を割ると、内側にびっしりと厄除けの豆が詰まっているという趣向です。

客の特別注文にも細やかに応え、上菓子の種類の多さを誇るこの店の中でも、「福枡」は先代が三十年以上前に考案した定番。節分の頃には店頭にも並ぶおめでたい菓子です。

 

【関連記事】
【京の菓子】蒸したてふかふかの皮から立ち上る麹の香り 〜本家玉壽軒 高砂饅頭
【京の菓子】二色の淡い色目の皮をかさねた中に優しい味の餡が〜御室和菓子いと逹 包み餅
【京の菓子】宮中の年の瀬の慌ただしい情景を、餅であらわす〜御粽司 川端道喜「袴腰」