イラスト:藤田ヒロコ
モノで溢れた親の家を片づけるという大作業、「親家片(おやかた)」。家族の数だけ、そこで暮らした年月のぶんだけ、溜め込んだ量も思い出の深さも積み重なっているから、手をつけるとなると一筋縄でいくはずがありません――(「読者体験手記」より)

片づけをさせてくれない認知症の母

2年前、母を老人ホームに入れることになりました。2010年に認知症と診断されてから2年間は父と二人で暮らしていたのですが、男手だけでは栄養面や衛生面に不安があるため、家族で話し合って決断。

その時に抱いた思いは、「これでやっと実家を片づけられる」でした。

というのも、母は私にも父にも、一切片づけをさせてくれなかったからです。ゴミ袋一つさえも捨てられるのを嫌がり、それならば自分でやるようにと言っても聞き入れません。夫婦仲はとても良く、父は今も週に3度は母のいる施設に通って面倒を見ているのですが、こと片づけに関してだけは、長い間諦めていたようです。

あまりにも強く拒否されるため、一度、私が母の古い服をコッソリ捨てようとしたこともありました。実家から私の家までは自転車で30分程度。しかし、ゴミ袋をカゴと荷台に載せて帰ろうとしたところを、運悪く母に見つかってしまったのです。ひどく怒られ、もちろんゴミ袋は奪い取られてしまいました。