『婦人公論』2月9日号の表紙に登場している松坂慶子さん(表紙撮影:篠山紀信)
現在発売中の『婦人公論』2月9日号の表紙は女優の松坂慶子さんです。昨年の自粛期間、丁寧に生活を送ることで、『赤毛のアン』のように家と仲良くなれた気がすると語る松坂慶子さん。外出できない期間の心の支えとなったものは――。発売中の『婦人公論』からインタビューを掲載します。(構成=篠藤ゆり)

万葉の歌の豊かさに支えられ

2020年の4月から8月までの5ヵ月間、新型コロナウイルスの影響で、ドラマなどの撮影がストップしました。

せっかく家にいるのだからと気持ちを切り替え、料理のレパートリーを増やしたり、家の掃除に励んだり。長いホースを買ってきて網戸の掃除もしました。私は常々、幼い頃から愛読してきた『赤毛のアン』のアンのように、生活の中に楽しみを見つけたいと思っていましたが、丁寧に生活を送ることで、家と仲良くなれた気がします。

外出できない期間の心の支えになったのは、『万葉集』と向き合う時間です。『万葉集』とのご縁は、平城遷都1300年を迎えた2010年に生まれました。アジアとの文化交流の一助に『万葉集』の朗読をしたいという思いが募り、万葉学者の上野誠先生にご相談し、お力添えいただいたのです。以来、『万葉集』の朗読がライフワークになっています。

万葉の歌を声に出して読むと、気持ちがどんどん大きくなり、ワクワクしてきます。たとえば、持統天皇などの歌に詠まれている香具山(かぐやま)は、どんなに高い山かと思っていましたが、実際は丘のように低い。それを「天(あま)の香具山」と呼ぶ万葉人の感性の豊かさ、ものごとを感動的に捉える視点が素敵だと思うのです。ただの石でも、「宝石の原石だ」と考えたら、世界がまったく違って見えてきます。