現在でも、厄という観念は生きている。厄落としや厄祓いをしてもらう人は少なくない。とくに、厄年を気にする人は多く、そうした人たちは、前厄、本厄、後厄と続く期間に、神社仏閣を訪れ、厄祓いをしてもらう。

だが、節分やその翌日にめぐってくる立春は祝日ではなく、昔より、重視されなくなっている。また、節分の豆まきも、厄を祓うという要素は薄れ、年齢の数だけ豆を食べるとか、有名人が神社に来て豆まきをするといった側面の方が目立つようになってきた。

『神社で拍手を打つな! -日本の「しきたり」のウソ・ホント』(島田裕巳:著/中公新書ラクレ)

「恵方巻」はコンビニが広めた?

節分は、しきたりとしては次第に衰えてきたと言える。そうしたなかで、恵方巻という新たなしきたりが生み出され、瞬く間に広がった。

恵方に向かって立ち、無言で太巻きを食べきる。恵方巻には、従来の節分のしきたりにあったような、悪を退けるとか、厄を祓うといった側面は見られない。恵方巻を丸かぶり(かじり)することは、ひたすら縁起のいいこととされている。

恵方巻については、多くの人が覚えているだろうが、少し前まではそんなしきたりはなかった。恵方巻がいつから節分のしきたりになったかについては、諸説あって、はっきりしない。だが、全国に広まったのは21世紀になってからである。コンビニが広めた可能性が高い。