イラスト:霧生さなえ
自分の歳は棚に上げ、他人の目なんて気にしない。夢中になれるものができたとき、幸福度は最高潮になるようです。59歳の長尾さんの場合、それはファッションとのことで――(「読者体験手記」より)

「孫へのプレゼント」ではありません

私は痩せた! 約1年かけ、20キロ以上のダイエットに成功したのだ。そのおかげで、更年期以降着られなくなってタンスの肥やしになっていたたくさんの洋服が再び日の目を見ている。

以前は外出のたびに、「ボタンがとまらない」「ファスナーが上がらない」と心が折れていた。1年前までは服を買いに行くこと自体躊躇していたのに、スリムな服がスルッと入る今では、フィッティングルームに入るのが楽しいのなんのって。そんな私が最近ハマっているのは、大きな声では言えないが、ティーンズファッションなのだ。

ことの発端は、ある日の散歩中のことだった。いつもなら私にはまったく関係ない、と気にもとめずに通り過ぎていた1軒の可愛らしいショップ。だがその日に限って、店頭に飾ってあった赤いショート丈のトレーナーにふと目がとまった。

「ん? コレはちょっと似合うかも」

鏡の前で当ててみると、全然イケる。還暦間近のオバサンでも抵抗ない、シックな赤が気に入った。胸元には白抜きで、「笑っていると幸せが来るよ」みたいな意味合いの《ガーリー・イングリッシュ》がポップな文字で躍っている。

今までの私なら目もくれない世界の代物なのに、なぜかこのときは、魂を揺さぶられたのである。何てこっぱずかしく、ラブリーなんだろう。私は即買いし、それ以来、ヘビロテするようになった。赤いトレーナーの着心地に魅了されてしまったのだ。