岸本葉子さん
2019年度、振り込め詐欺やオレオレ詐欺などの「特殊詐欺」の被害額は301億5000万円。これでも5年連続で減少しているというから、この犯罪が周知されてきたことと、同時にそれでもなお騙されてしまう人が出てしまう深刻さという両面が窺えます。そして、ここにも被害に遭ってしまったという人が……。エッセイストの岸本葉子さんが「まさか私が」体験をつづります。
※本稿は、岸本葉子『ふつうでない時をふつうに生きる』(中央公論新社)の一部を再編集したものです。

なんの疑いもなくネットで注文したら……

不覚にも詐欺に遭ってしまった。事の出だしはネットでの商品購入。手口を知っていただきたく、お恥ずかしいが一部始終を書くことにする。

買ったのはスポーツシューズ。大手ショッピングサイトでは売り切れで、検索サイトに商品名と型番を直に入力したところ、残っている店があった。サイトトップには「スポーツ専門店」と。

不審は抱かなかった。以前もショッピングサイトで売り切れの品を、専門店のオンラインショップで買ったことがある。これも同様のケースだろう。定価約1万6千円の品が9060円。すごく安ければ怪しむが、これも納得の範囲内だ。昨年の商品で、そろそろ今年のが出る頃だ。在庫処分をしたいのだろう。

商品ページの下の方には、会社名、沖縄県の住所と電話番号、メールアドレス、社長の氏名が載っていた。

ほどなく注文確認メールが届く。挨拶にはじまり、ごく一般的な利用ガイド。支払い方法についてはリンク先が案内されている。リンク先で示される番号を、コンビニの端末で入力し、出てくる伝票をレジに持っていって支払うしくみ。

『ふつうでない時をふつうに生きる』(岸本葉子:著/中央公論新社)