「生活でも芸でも、基礎と言いますか、足元がしっかりしているからこそ、自分の目標を貫ける、そんな気がします」


どんどん、共働き夫婦をやればいい

夫人は言うまでもなく、扇千景・現参議院議長。前の国土交通大臣である。出会いは54年、扇雀ブームを受けて映画界入りした頃。結婚について扇さん自身、インタビューで「妊娠したから結婚したんです」と述べている。


できちゃった婚の走り、ですかな。獅童の大先輩ですね(笑)。(数年前、写真週刊誌に「フライデーされた」ことに触れると)あんなこと、別にいいんですよ。私は平気だったし、そういうことを、いちいち説明したりはしません。(笑)

まあ、あれだけの激務のなか、よくやってくれていますよ。今回の襲名披露公演でも、国会が始まる前は、毎日必ず楽屋に顔を出して、知っているお客様にはちゃんと挨拶していました。

妻の仕事については、周囲も別に何も言いません。立派に「梨園の妻」を務めてくれています。確かに、後輩たちを見ていると、今のところ、私らのような夫婦はおりませんけれど、どんどん、共働き夫婦をやればいいと思ってますよ。

もともと私たち夫婦は、ゼロと言いますか、マイナスから出発したんです。58年に結婚して、私の母と京都で同居していたのですが、60年に東京の渋谷で夫婦と子供だけで暮らし始めました。そのとき、家を建てるのに銀行から2億円を借りましてね。

そういうなかで、自分たちだけで家庭を築かなければならなかった。妻も女優に復帰して、子供を育てながら、夜も寝ないで働きましたよ。おかげさまで、妻も仕事に恵まれましたし、近松座結成の頃にはかなり安定した生活になりました。

生活でも芸でも、基礎と言いますか、足元がしっかりしているからこそ、自分の目標を貫ける、そんな気がしますね。先だって捕まったIT長者にしてもそうですが、基礎がしっかりして、ちゃんとした目標を持っていないと、一時は「時代の寵児」になっても、不意に転ぶことになりかねないんじゃないでしょうか。

私の座右の銘は「一生青春」ですが、これからも、新しいことに挑戦していきたい、そう念じております。
(抄録)