「夫にだけは、私を完全に理解してほしいと過剰な要求をしてしまう。彼への甘えでしょうね。ただ、今のところはこんな私を面白いと言ってくれるので、ありがたいです。」(小島さん)

夫にだけは完全に理解してほしい

岩波 パートナーの方との関係は、いかがでしょうか?

小島 私が夫と出会ったのは20代の頃なのですが、当時は携帯電話が出始めたばかりで、電波が安定していなかったんですよ。しょっちゅう電波が切れるのでイライラして、「もういらない、こんな電話!」と道に叩きつけたことがありまして……。すると彼は黙って、壊れた携帯電話を拾ってくれたんです。後で謝ったら、「慶子の落とした携帯電話を拾うのは俺の仕事なんだと思った」と。

沖田 なんじゃそれ。(笑)

小島 親からも、「お前は失敗作」だとか言われていたので、感激しましたね。だから、結婚するならこの人しかいない、と思ったんです。

岩波 病院に来るのは逆のパターンが多く、だいたい妻が夫を連れてきて、「この人は私の言うことを何も聞いてくれない、どこかおかしいに違いない」と言うのです。

小島 身近な人がアスペルガー症候群であることで、心身に不調をきたしてしまう「カサンドラ症候群」が話題になりましたよね。夫は私がADHDだと診断されてから、本をたくさん読んで知識を増やしてくれています。それでも時々、私が口頭での連絡を覚えられないことを忘れて、口頭で予定を伝えてくることがある。悪気がないとわかっていても、なんでわかってくれないのと、ついしつこく怒ってしまうこともあります。

岩波 攻撃的になるのも、ADHDの特性のひとつですが、それを理解し、耐えているわけですね。(笑)

小島 夫にだけは、私を完全に理解してほしいと過剰な要求をしてしまう。彼への甘えでしょうね。ただ、今のところはこんな私を面白いと言ってくれるので、ありがたいです。