一番困っていることへの対処法を考えていく

治療の目標は、あくまでも大きな問題なく社会生活を送れるようにすることです。ASDやADHDの特性そのものを「なくす」ことはできません。特性とその表れ方、そして置かれている環境はひとりひとり異なります。一番困っていることは何か、どんな生活を希望するかなどを聞いたうえで、対処法や環境の調整などを考えていくのです。

ASDの場合はグループでのSST(ソーシャルスキル・トレーニング)、カウンセリングや認知行動療法などの心理療法を行います。また、発達障害に合併して発症しやすいうつや不安障害などの二次障害が見られる時は、気分を安定させる薬などを処方します。ADHDの場合は、症状そのものを抑える薬があり、不注意や多動性、衝動性、すぐにカッとなるといった問題行動が、薬で軽くなるケースも。

私のクリニックではサプリメントも利用します。神経伝達物質であるドーパミンを増やし、神経伝達のネットワークを強化する狙いがあります。整腸作用のある乳酸菌を摂取したところ、こだわりが薄れるなどの効果が見られた人もいました。

発達障害を持つ人が、二次障害をきっかけに病院を受診することは多いのですが、精神科や心療内科では発達障害の知識を持つ医師が限られているため、発達障害の発見につながらないことも。もし発達障害の疑いがあるなら、根本的な治療を受けるためにインターネットなどで病院を探す際は、「大人の発達障害」で検索してください。

今や、発達障害が子どもだけのものでないことは周知されています。社会に出て何年も苦しんで、やっと発達障害だと気づく人も珍しくない。「もうこの歳だから」「今さら」と諦めず、医師や支援者とともに打開策を考えましょう。

〈後編〉自分、家族が「発達障害」と診断されたら…