「アルコール依存症」の診断を受けた夫

私の知る夫は、一日じゅう自室のベッドに横たわり、ラジオを聞いていました。こんな夜遅くにどこへ、何をしようと出かけたの? 今日まで、この疑問は私の心の片隅に残ったまま。映像の中の夫は、うつむき加減で歩いていました。

夫から笑顔が消えたのは、私が彼の言動を警戒するようになったのは、いつ頃からか……。45年間の結婚生活のあれこれが、走馬灯のように甦ってきます。夫は、私と結婚して幸せだったのでしょうか。

23歳の時にお見合い結婚した6つ上の夫は、病気知らずでしたが、50歳を前にして職場でのトラブルがきっかけで酒量が増えていきました。酒を飲んで仕事に行くようになったため精神科を受診させたところ、「アルコール依存症」の診断を受け、十数年間、入退院を繰り返すことに。

藁にもすがる思いで断酒会のグループに参加させ、時には大阪にまで足を運んでカウンセリングを受けさせたこともあります。私は夫をそばで支えていましたが、本人の気力が続かない。酒を断ってはまた溺れ、ついには57歳で勤め先を辞めることになりました。その後も何度か転職を繰り返したものの、どこも長続きせず、本人の働く意志も失われていったのです。

完全に無職となった夫は、親から引き継いだ田畑の耕作をすることもなく、アルコールにどっぷり浸かりました。なかなか酒をやめられなかったのは、「好きなお酒が飲めなくてかわいそう」と、義母が私に隠れて与えていた小遣いがあったからです。