ミシンカフェ店内の様子。ボタンや糸など必要な材料も購入できる(撮影:本社写真部)
まだまだ自分にはやれることがある」と信じて行動に移せば、意外と道が拓けることもある。新しく活躍の場を得た人に共通していたことは――1人目は、長年の夢を叶えた69歳の女性の体験談です。(取材・文=篠藤ゆり 撮影=本社写真部)

テレビで見た「ミシンカフェ」に惹かれて

体が動くうちは自分らしく働いて、生きがいを感じたい――。そう考えるシニア女性が増えている。

だが、「仕事」で夢を叶えるとなると、経済的にも体力的にもハードルは一気に上がる。年齢の壁にくじけそうになる人が多いのではないだろうか。そんななか、60代や70代でも、働くことを通して温めていた夢や希望を叶えた人たちがいる。思い切って挑戦した人たちに話を聞いてみた。

茨城県ひたちなか市在住の長谷部美紀子さん(69歳)は、2020年11月、客がミシンを気軽に使える「ミシンカフェ」をオープン。70歳を目前に、10年間抱き続けた夢を実現させた。

長谷部さんは、東京の文化服装学院を卒業後、アパレルメーカーで主に子ども服のデザインを担当。ほかにも、コーヒードリップのデモンストレーションや豆の販売など、その時々の「やりたいこと」を仕事にしてきたという。

夫の転勤でいまの地に落ち着いてからは、カルチャースクールや自宅でビーズアクセサリー作りを教えるかたわら、手芸材料を扱う小さなお店「ミューズの森」を始めた。そんなある日、たまたまテレビで、ミシンを何台も置いて時間制で利用してもらうミシンカフェの存在を知る。

「これなら私もできそう。やりたい! とすぐに思いました。ミシンは持っていても、出すのが面倒だし、作業スペースも必要ですよね。生徒さんたちからも、『家で手芸をすると片付けが大変。同じ趣味を持つ人と集まれる場所があればいいのに』という声があって」

とはいえ、潤沢な資金もなければノウハウもない。「自分の淹れたコーヒーも出せるお店ができたら」と紙にイメージを描いたりしているうちに、年月が経っていった。