クラウドファンディングで資金調達

「すると、『やってみたらどうですか? 資金のない方のために、クラウドファンディングという制度があるんですよ』とアドバイスされました」

折しも、ミューズの森の隣にあったラーメン店が廃業し、そのスペースが貸しに出されると聞いた。しかも、ショップとは店内でつながっている好条件だ。長谷部さんは思い切って、インターネットを利用した資金調達にチャレンジする決心をした。

「クラウドファンディングという言葉は知っていましたが、知識は一切ありません。でも、コーディネーターの方々のサポートを受けながら、ネットで募集を始めました」

蓋をあけると、50日間で36人から、24万4000円の資金が集まった。SNSに縁がない人のために、ショップにチラシを置いたことも役に立ったという。集まった資金で内装工事を行い、ミシンを2台購入。遠方から寄付してくれた人もいて、計7台が揃い、ミシンカフェをオープンすることができた。利用料は1時間500円から。いまはまだ、常連さんたちによって支えられているという。

「コーヒーの提供は、食品衛生責任者の免許取得のハードルが高くて間に合わなかったのですが、なんとか開店までこぎつけられました」

クラウドファンディングで寄付をしてくれた人には、リターン(お返し)として、ミシンカフェの3時間利用チケットか、樹脂を使った長谷部さん手作りのアクセサリーを送っている。

「たぶん私にとっては、仕事が道楽なんですよ。だから、できれば死ぬまで働きたい。いまはカフェといっても、《ミシンが使える場所》というだけですし、まだ夢の途中です。軌道に乗ったら、次はコーヒーを出せるようにしたい。

そして最終的には、ここは若い方に譲って、昔ながらの喫茶店を始めたいんです。そのためには、目の前のことをひとつひとつ頑張らないと。ゆくゆくは、コーヒーの香りに包まれてこの世から旅立つのが、一番の夢です」


《ルポ》「いつか」はいま!新しい扉を開いてみれば
【1】70歳を目前に、念願の《ミシンカフェ》をオープン
【2】パン工房「バーバラはうす」の最高齢は71歳
【3】人気ラーメン店「麺家うえだ」の店主から市議会議員へ