まだまだ自分にはやれることがある」と信じて行動に移せば、意外と道が拓けることもある。新しく活躍の場を得た人に共通していたことは――。4人目は人気ラーメン店主から市議会議員に転身した77歳の女性の体験です(取材・文=篠藤ゆり 撮影=本社写真部)
《77歳の新人》を売り文句に
遠くからも客がやってくる人気ラーメン店「麺家うえだ」の店主から、77歳にして埼玉県新座市の市議会議員に転身したのが、上田美小枝さん。
バーナーを使いこなしてスープを炙る姿から「ファイヤーおばさん」の異名を取り、ラーメン通の間ではよく知られた存在だ。そんな上田さんが20年2月の市議選に打って出ようと思ったのは、さかのぼると11年の東日本大震災がきっかけだった。
「震災後に、ラーメン店の仲間たちと、炊き出しボランティアをやっていました。当時埼玉県内には、岩手や宮城、福島から避難してきた方が多く暮らしていたんですよ。スープの香りにニコニコして集まってくる子どもたちと話すと、津波で両親を亡くしていたり、家族と離れ離れで生活していたり……。ボランティアは2年半続けましたが、仲間たちと原発や子どもたちの未来について語り合うだけでは何も変えられないなと思って」
自分に何ができるのかと悶々と考えていた頃、麺家うえだが20周年を迎えることに。区切りのいいところで店の経営を後継者に譲ることにし、次の道を模索し始めた。
「60歳までは皆さん、子どものことや自分の仕事で精一杯でしょう。60過ぎて一段落した時、やっと人のために何かできるんじゃないでしょうか。1人じゃ何もできなくても、シニアがたくさん集まれば大きなエネルギーになる。だったら、77歳の自分がその先鋒となって、子どもたちのためにエネルギーを燃やしたいと思ったんです」