今度は自分が人を支える側に
今回取材した皆さんが共通して口にしたのは「多くの人に支えられてきたから、今度は自分が人を支える側になりたい」という言葉だ。有形無形の支援・応援の奥にある心を、子どもたちはしっかりと受け止めていた。募金を原資として広く被災地の支援を続けてきた日本ユネスコ協会連盟の支援担当・上岡あいさんは、こう語る。
「日本ユネスコ協会連盟では緊急支援物資や子どもたちの心のケアのほか、さまざまな形で教育復興支援を行ってきました。中でも、返済不要の就学支援奨学金は現在も継続中で、これまで被災3県の25市町村で、3413人の子どもたちを支援してきました。震災で住まいを失ったり、親御さんが職を失い大幅な減収になるなど、厳しい状況に置かれたご家庭の子どもたちの高校進学費用に役立ててもらっています」
東日本大震災当時18歳未満で親を亡くした子どもたちは約1800人。さらに、保護者はいるものの経済状況の悪化で就学支援が必要になったのは、小中学生だけで3万7000人以上にのぼったと言われる。日本ユネスコ協会連盟に集まったたくさんのお礼の手紙の中に、3年前に奨学生の保護者から届いたこんな一通があった。
《私たちの子どもたちが奨学金をいただくということは、どれだけ多くの方々の祈りが込められているかと思わされます。(中略)震災の直後は非常な悲しみと、負の感情に打ちのめされていました。しかし今は、希望を感じています。(中略)これから復興していく可能性を信じたいです。今までのご支援に感謝し、私たち保護者も、また子どもたちも、一人一人の希望を胸に抱いて歩んでいけたら幸いです(福島県大熊町*)》
苦難の10年を生き抜いてきた被災地の子どもたち。だが彼らはもはや、無力な子どもではない。つらい震災の体験も糧にして、未来を作る力をその手にしていた。