「起こっていることに現実感が持てなくて。目の前にお骨があるけれど、まだ信じられません。」(撮影:木村直軌)
かつて『オレたちひょうきん族』に出演、バラエティ番組で人気を博す女子アナのはしりだった山村美智さん。社内結婚した夫は、多くのドラマや映画を手がけたプロデューサーだった。食道がんの宣告から、わずか1年半の闘病で他界。享年65、早すぎる別れに、まだ実感がわかない(構成=平林理恵 撮影=木村直軌)

入退院を繰り返すこと13回

夫の宅間秋史が昨年12月18日に亡くなって、ちょうど1ヵ月になります。一人っ子同士の結婚で子どももいなかったから、今の私は本当のひとりぼっち。でも、起こっていることに現実感が持てなくて。目の前にお骨があるけれど、まだ信じられません。夫が使っていたバスタオルやフェイスタオルはいつもの場所に掛けてあり、大きなベッドの左半分は夫のためにあけてあるのに、夫だけがいない。

結婚生活は36年半。夫はフジテレビ時代の同僚で、一緒に遊んだ仲間の一人でした。ドラマや映画を手がけ、退職後も制作会社を立ち上げて仕事を続けてきました。私たちはずっとラブラブだったわけではなく、とくに最初はいろいろなことがあったけれども、結婚って、長く続けて二人で積み上げていく何かがあるんですね。

彼は夫であるだけでなく、父親を早くに亡くした私にとっては父でもあったし、頼れる兄でも同志でもありました。その彼がいなくなって、自分が半分になってしまったようです。

夫が食道がんと宣告されたのは、2019年の7月でした。それから入退院を繰り返すこと13回。最後の2ヵ月近く、私も病院に缶詰め状態で付き添いました。体力も心も限界の毎日だったけれども、今は、あのときの私がすごくうらやましい。だって、生きている夫と会えていたんですもの。

手もつなげたし、足をベッドに乗せて私もウトウトするとき、足と足とを重ねることもできた。「みっちゃんは、秋ちゃんといられて幸せだよ」と、何度でも伝えられました。