スー 男性って、基本的に年をとるほど馬鹿にされにくくなっていくじゃないですか。

松任谷 女性から見てでしょう?

スー 男性は会社のような縦社会にいると、20代の時よりも30代、40代のほうが社会的信用とか男としての価値が高まる傾向があるように思います。でも女性は、若い頃は「若い」というだけで、頼んでもいない商品としての高値を付けられ、加齢とともに値付けが悪くなる。

松任谷 もうちょっと詳しくお願いします。

 

男女で見えている世界が違う ~タクシーでのタメ口問題

スー 今回松任谷さんのエッセイ『おじさんはどう生きるか』を読ませていただいて、「男女で見えている世界がこんなに違うんだ!」と非常に興味深かったことがあって。たとえば「タクシーに乗ると、運転手さんは自分より年齢が上でも敬語を使う」と書かれていたけれど、女性はタメ口をきかれることが多いんですよ。

松任谷正隆さんのエッセイ『おじさんはどう生きるか』中央公論新社刊

松任谷 誰が、誰に?

スー 私たちに、運転手さんが。

松任谷 うっそお。それは接客業としてダメじゃないの。

スー よくある光景ですよ。相手としては親しみのつもりで悪意はないんでしょうけど。でも、軽く見られていますよね。高値が付くと言っても、人として尊重されるという意味ではないので、若いほど女性はそういう目に遭いがちで、おばさんになって初めて「タメ口をきくなら私はお返事しませんけど?」といった“おばさんの鎖鎌”をぶんぶん振り回して、強い態度に出られる。ある意味、おばさんになってようやく人間としてデビューできるわけです。それが、おばさんという立場の一つの使い方だと思います。

松任谷 なるほどね。

後編につづく

本記事は2020年11月に収録したものです

※3月23日に中央公論新社から刊行される松任谷正隆『おじさんはどう生きるか』にこの対談のロングバージョンが収録されます