「観客すべてのオンライン化に成功したとしても、一番の理想は選手に観客の存在を感じさせて、それにいちいち反応しながら競技できる環境をつくることなんでしょうね。」(為末さん)

 

声援があると力が出る

為末 選手も観客の存在感が大事だと言いますね。僕、カープファンなんですけど、ホームである広島での試合の勝率が高いのは当たり前でした。でもヨーロッパのあるサッカーチームでは、無観客試合になったことでそういうホームアドバンテージが消えたそうです。

清水 私、「頑張って」って言いすぎると、かえってその選手にプレッシャーをかけるんじゃないかと思ってた。(笑)

為末 プラスに働くほうが多いですよ。これは実験室で得られた結果ですけど、ギリギリの球がきたとき、声援が大きいとバッターが打ちに行く傾向が高いそうです。選手が自分を完全に切り離してパフォーマンスするのは、難しいことなんでしょうね。想像以上にまわりの影響を受けるというか。

清水 このオリンピックは、まさに観客を入れるかどうかも議論されてますけど、どうなるんだろう。

為末 観客すべてのオンライン化に成功したとしても、一番の理想は選手に観客の存在を感じさせて、それにいちいち反応しながら競技できる環境をつくることなんでしょうね。どうしたらいいのかな、観客の体が全部見えてるとか?

齋藤 観客もオンライン用の反応を練習したらいいのかもしれない。顔の近くで拍手するとか。

清水 あははは。下のほうで拍手しても画面に映らないですもんね。

齋藤 授業でもね、オンラインだと面白いことを言っても学生の反応がわかりにくいので、「フラメンコみたいに顔の近くで、見えるように拍手してください」とお願いしてるんです(笑)。でもこれってとても大事なことで、プレゼン後の学生も拍手によって報われるので、疲れが少ないんですよ。