東京オリンピック・パラリンピック組織委員会の会長職にあった森喜朗さんの、女性をめぐる発言が波紋を呼んだのは2月3日のこと。森さんの辞任、後任後継者の浮上、その白紙化、人事の再検討……と急転直下の騒動のさなかに齋藤孝さん、為末大さんと会った清水ミチコさんは、この話をせずにはいられません――(撮影=大河内禎)
人をカテゴリーに入れて語るなかれ
清水 さっき森会長が辞任の意向を固めた、というニュースが入ってきましたよ。
齋藤 ここ数日、為末さんもお忙しかったんじゃないですか。
為末 選手側の人間が沈黙したままでいるのも違うかな、と思って。今日も、いくつかのメディアでお話ししてからここにきました。
清水 スポンサー企業も批判的でしたね。特に強い遺憾の意を表明したのは、トヨタ自動車かなあ。
為末 自動車会社では初のIOC(国際オリンピック委員会)トップスポンサーなので、世界に向けたメッセージ性を感じますよね。森さんが辞意を固めたのは、米国NBCの「彼は去らなければならない」というオピニオン記事が大きかったんじゃないですか。
齋藤 オリンピックの放映権を持つ放送局ですね。
為末 NBCは莫大な放映権料を支払っているので、IOCも不問のままではいられなくなったんだと思います。それにしても……、これがオリンピックを開催するということなんでしょうね。
清水 世界中のメディアで、一気に報道されるっていう。
為末 これからは自分の発言が英語にどう訳されるかまで計算しないと活躍できないかもしれません。
清水 英語になると、そんなに印象って変わるんですか。
為末 森さんの発言も、日本語で捉える印象とも違うみたいです。うちの妻はアメリカ育ちで、大学院もアメリカなんですけど、曰く、たとえば「黒人は足が速い」というフレーズはアウトだ、と。
清水 逆差別になるんですか?
為末 カテゴリーに入れて特徴を語ることがNGなんです。速いんですよ、実際。でも事実かどうか以前の問題だと言っていました。