客の反応が文化を作っていく
為末 以前、アメリカの大きなホールで、500人くらいに向かって話したことがあるんです。講演ではなく、客席からなんですけど。ヘタな英語なのにしゃべりやすくて、自分でもびっくりしちゃって。訓練されてるのかと思うくらい、盛り上げてくれるんですよ。
齋藤 オーディエンス・マナーができてるわけですね。
為末 あれで鍛えられたのがアメリカ大統領なんだ、と実感しましたね。正直、最後のほうは誰も僕の英語がわかっていなかったと思うんだけど。(笑)
清水 同じようなことを、山下洋輔さんがおっしゃってました。海外だと、演奏家にとって「ここできてほしい」というときに、あうんの呼吸で拍手や声援がくるって。
為末 日本にはブーイングの文化がないので難しい話なんですけど、観客が黙って聞いていると、しゃべっている側はどう受け取られているかがわからないままだと思うんです。「ブーッ」を伝えるのも観客の役割のひとつなんじゃないかと、森さんの件でちょっと思いました。「あ、これは超えてしまった」と気づいたら、その場で謝る。そういうのを繰り返しながら、互いに「話す」「聞く」を学習していけるといいですよね。
<後編につづく>
為末大
元陸上選手
1978年広島県生まれ。大阪ガスを経て2003年にプロ転向。男子400メートルハードルで3度の五輪出場を果たし、世界陸上で2度銅メダルを獲得した。現在は引退後の選手のサポートやシェアオフィスの運営など幅広く活躍する。『諦める力』『遊ぶが勝ち』など著書多数
齋藤孝
明治大学教授
1960年静岡県生まれ。東京大学法学部卒業。同大学大学院教育学研究科博士課程満期退学。専門は教育学・身体論・コミュニケーション論。教職課程で中高教員の養成に従事。『身体感覚を取り戻す』(新潮学芸賞)、『声に出して読みたい日本語』(毎日出版文化賞特別賞)シリーズ、『新しい学力』『英語コンプレックス粉砕宣言』(鳥飼玖美子氏との共著)、『60代からの幸福をつかむ極意』など著書多数。
清水ミチコ
タレント
1960年岐阜県生まれ。モノマネをはじめとするお笑いにとどまらず、女優、司会、エッセイ執筆など幅広く活動。『所さんの学校では教えてくれないそこんトコロ!』(テレビ東京系)、『ラジオビバリー昼ズ』(ニッポン放送)にレギュラー出演。YouTube「清水ミチコのシミチコチャンネル」で撮り下ろしネタを公開。著書に『カニカマ人生論』『まるい三角関係~三者三様おしゃべり三昧』などがある。全国ツアー「清水ミチコアワー ~ひとり祝賀会~」を開催中。詳しくは清水ミチコHP4325.netをチェック!