客の反応が文化を作っていく

為末 以前、アメリカの大きなホールで、500人くらいに向かって話したことがあるんです。講演ではなく、客席からなんですけど。ヘタな英語なのにしゃべりやすくて、自分でもびっくりしちゃって。訓練されてるのかと思うくらい、盛り上げてくれるんですよ。

齋藤 オーディエンス・マナーができてるわけですね。

為末 あれで鍛えられたのがアメリカ大統領なんだ、と実感しましたね。正直、最後のほうは誰も僕の英語がわかっていなかったと思うんだけど。(笑)

清水 同じようなことを、山下洋輔さんがおっしゃってました。海外だと、演奏家にとって「ここできてほしい」というときに、あうんの呼吸で拍手や声援がくるって。

為末 日本にはブーイングの文化がないので難しい話なんですけど、観客が黙って聞いていると、しゃべっている側はどう受け取られているかがわからないままだと思うんです。「ブーッ」を伝えるのも観客の役割のひとつなんじゃないかと、森さんの件でちょっと思いました。「あ、これは超えてしまった」と気づいたら、その場で謝る。そういうのを繰り返しながら、互いに「話す」「聞く」を学習していけるといいですよね。

 

<後編につづく

 

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