スポーツにおいては羨ましがられる日本

為末 「そもそも日本ってどういう国なんだっけ?」を考えさせられる7年半でした。海外と比べて日本がダメなところ、逆に羨ましがられるところを日々突きつけられるというか。まあ、スポーツの面では羨ましがられることのほうが多いんですけどね。これだけ多くの選手が競技できる環境が整っている国って、ほかにないんですよ。民間企業がサポートして「駅伝だけで200~300人は競技しています」って言うと驚かれます。

清水 あと、オリンピックってこんなにお金が大きく関わっているんだって、はじめて知りました。

為末 いや、恥ずかしながら僕も、現役時代にはまったくわかってなかったです。でも選手は気づかないものなんですよ。モチベーションの半分くらいは、「モテたい」とか「有名になるぞ」みたいな気持ちだったりするんで。(笑)

齋藤 オリンピックの経済事情とは別の問題になりますが、陸上競技の選手がプロとしてやっていける環境の礎をカール・ルイスさんがつくって、そのあと、為末さんも続いてこられたわけですよね。

為末 僕はそういう先駆者たちのだいぶ後です。国際的にはやっぱりカール・ルイスさんの存在が大きいですし、国内では有森裕子さんが最初にプロになられて。確かに僕は男性初のプロ宣言だったので話題になりましたけど、プロ化の波がきたのは1998年から2000年の頃だったと思います。

清水 野球やボクシングに比べると、陸上競技はプロとアマチュアの違いがわかりにくいかも。

為末 簡単に言うと企業に所属せず、自分でスポンサーを見つけながら競技するのがプロ。ただ、企業に所属しているか否かは、会社員と個人事業主くらいに違います。

齋藤 マネジメントも自分だし、さまざまなリスクをコントロールしなければいけないですからね。