病院で告げられた病名は、急性リンパ腫。強いお薬を使うと急変することもあるというので、抗がん剤ではなく、ステロイド治療を行うことに。しばらく入院し、小康状態になったので、3月中旬に熱海の病院に転院しました。幸い食欲も戻り、お手伝いさんが届けるお弁当を「おいしい」と食べていたそうなので、お元気になりつつあると思っていたのです。

とはいえ、お医者様からは、年齢も年齢だからもしものことがあるかもしれないと言われたので、毎年橋田さんの誕生日の5月10日に橋田文化財団が選ぶ「橋田賞」の発表を3月28日に早めました。「無事終わりました」とお電話でお伝えしたところ、「ありがとう、よかったわ」と。まだその時は、しっかり意識があったのです。

4月に入り、橋田さんはご自宅にどうしても帰りたい、と。病状も安定していたので退院し、自宅でお医者様がついてくださることになったそうです。それが4月3日だったと思います。一晩ご自宅で過ごされ、翌朝、突然旅立たれたのです。

プライベートの旅行にて(写真提供:石井さん)

コロナ下の「渡鬼」、テーマにしたものは

「渡鬼」の第1シリーズが始まったのが90年。まさかこんなに長く続くとは思いませんでした。ここ数年は年に1度くらいの放送でしたが、今年放送する分もすでに構想が進んでいました。

東京の病院に入院中、お見舞いに行った時も、2人でいろいろ話し合って。橋田さんは「こんな時代だから、暗い要素のないドラマにしたい」と。「じゃあ、冒頭はどうやする?」と聞いたら、「コロナのことから入ろうと思う」とおっしゃっていました。