ピン子さん演じる五月が、幸楽でお客さんと話しているところに、夫の勇(角野卓造さん)に電話がかかってきて、おやじバンドの練習に借りている倉庫を、「コロナだからもう貸せない」と言われるんです。それで勇が不機嫌になるところから始めよう、と。
テーマは「人はひとりではない」。長山藍子さん演じる弥生のところは、配偶者を亡くした老人が集まってお茶を飲む場になっています。「ラスト、その中の2人の結婚式だったらいいわよね」と――。

「どこで結婚式やるの?」と聞いたら、「お金をかけずに、幸楽の椅子を上げてやるのはどう?」。つまり、すでにかなり具体的に構想を練ってらしたんです。人生の最終期をどう過ごすかは、90を超えた私たち2人のテーマであると同時に、もっとも現代的なテーマです。すばらしい内容だと思いました。

「だって、決しておひとりじゃないですもの。みんなまわりにいるんですから」(石井さん)

長らく暮らし、愛していた熱海に碑を作りたい

ご自身はいつも、「私はひとりぼっちだし、いつ死んでもいい」と言っていました。でも私はそのたびに、「だったらなぜリハビリに行ったり、病院に行ったりするの?」と怒っていたんです。「あなた、いつもそういうことを言うからイヤよ。もう言わないで」と。だって、決しておひとりじゃないですもの。みんなまわりにいるんですから。

橋田さんは以前から常々、葬儀もお別れの会もしたくないと言っていました。それが橋田さんの遺志とみんなわかっていたので、5日にご自宅から出棺をし、TBSの社長ほかごく親しかった方たちとつらい気持ちで骨を拾いました。

お骨は愛媛・今治にあるご両親のお墓に入るそうなので、私は分骨をお願いしています。橋田さんが長らく暮らし、愛していた熱海に碑を作りたいからです。橋田文化財団は継続してねと言われていたので、いろいろな方とご相談して運営していくつもりです。

最期は苦しむことなく、海も富士山も見える大好きなご自宅で過ごせて、本望だったんじゃないでしょうか。そして、橋田さんがたくさんの人に温かく見守られて逝けてよかったと思います。きっと喜んでおられることでしょう。

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4月27日発売の『婦人公論』5月11日号では、上記記事に加えて、二人の出会い、橋田さんの結婚秘話、『渡る世間は鬼ばかり』の思い出なども語ったロングインタビューを掲載します。『婦人公論』を彩った橋田さんの名言も併載します。