認知症の夫を10年間介護したタレントの芳村真理さん(撮影:大河内禎)
おしどり夫婦として知られていた、タレントの芳村真理さんと実業家の大伴昭さん。真理さんは10年間夫を介護したのち、2018年に看取りました。夫を亡くした喪失感と向き合い、新たな一歩を踏み出して──(構成=内山靖子 撮影=大河内禎)

50年間連れ添った夫との別れ

夫が、遺伝性の認知症を発症し、約10年間の闘病の末に亡くなったのは2年前のことでした。

夫の両親が2人とも95歳過ぎまで長生きしたので、夫は100歳を超えるだろうと思っていたんです。それが89歳で亡くなってしまうなんて……。「ねえ、どうしてこんなに早く逝っちゃったの?」って。いまだに、彼がこの世にいないという実感が湧きません。仕事柄、海外出張も多い人だったので、今でも遠い国に出かけたままのような気がして。

亡くなってから、時折、夫の夢を見るんですけど、夢の中でも「どこに出張に行っていたの?」と聞いてしまいます。ひとりで暮らす生活もかれこれ2年近くになりますが、いまだに夫がどこかで生きているような感覚なんですよ。

日本ポラロイドやカルティエ・ジャパンなど外資系企業の社長を歴任した夫の大伴昭は、とても素敵な人でした。ビジネスマンとしても、ひとりの男性としても責任感が強く、伴侶である私のことも本当に大切にしてくれました。見た目もカッコよかったし、お洒落をするのも大好きで。お互いに再婚同士で50年間連れ添いましたけど、ずっと夫婦仲もよかったですしね。

実は、私が司会の仕事をするようになったのも夫が勧めてくれたからなんですよ。33歳で結婚する前、私は女優の仕事をしていました。でも、たまたまあるワイドショーにゲスト出演したときに、「面白い! こういう仕事をしたい」って思ったんですね。そうしたら、「君には司会の仕事が向いているって、以前から僕が言ってただろう」って。