「今までの真理さんのイメージとは違いすぎる」と、マネージャーからは反対されたんですが、彼は「絶対に向いている」と勧めてくれて。それで『小川宏ショー』に出てみたところ、とても評判がよかった。それを機に、私は女優の仕事をすべて断って司会業にシフトすることにしたんです。もともと演じることが得意じゃなかったので、ちょうどいい機会だと思ったんですね。

夫はビジネスマンとして、長年、世の中の仕組みを見つめてきたので、私にどんな仕事が向いているかということも客観的に判断できる人。私が司会に転向した後も、新規の仕事のオファーがあったときは毎回、夫に相談し、「GO」と言えば引き受けて、「NO」と言ったらお断りする。契約書も毎回夫がチェックして、「ここはおかしい」と、私のマネージャーに逐一注意してくれました。

そんな夫のサポートがあったからこそ、『夜のヒットスタジオ』『3時のあなた』『料理天国』といった人気番組で司会を務めることができたのです。仕事が途切れることなく、85歳になった今でも現役でいられるのは、いわば夫のおかげ。本当に感謝しています。

 

彼の妻であることを大切に生きてきた

その一方で、彼は昭和一桁生まれで昔気質の日本男児でしたから、家では常に自分中心でマイペース。「飯、食いに行くぞ」と家族で外食するときも、行き先はいつも夫が行きたいお店。「今日は何を食べたい?」って、私や子どもたちに聞いてくれたことなんて一度もありません。(笑)

私の仕事に関しても、社会的に意義があり、理にかなったものなら認めてくれましたが、「自分の女房として恥ずかしいことはしてほしくない」という思いが強かった。たとえば、泊まりがけで、今でいうバラエティ番組のレポーターのような仕事の依頼が来ると、「一家の主婦が、自分の仕事で一晩家を空けるなんてありえない!」って叱られて。

そういう考えの人だったので、『夜のヒットスタジオ』のオンエアが終わった後も、私は毎回、飛ぶように家に帰っていたんですよ。夜11時前に番組が終わったら、「これからみんなで食事に行こう」っていうのが業界ではあたりまえ。でも、「夫も子どももいるのだから、仕事が終わったらすぐに家に帰ってくるべきだ!」という夫の言葉に従っていました。そういう本人は赤坂のジャズバーで歌なんか歌って、好きに遊んでいたんですけどね。(笑)