「ストレスホルモン」と呼ばれるグルココルチコイド

まずは、断れない脳のメカニズムを見てみましょう。

脳の働きに深く関わるのが、グルココルチコイドという血糖値の上昇に関わるホルモンです。ストレスを受けたときに脳からの刺激で分泌が増えることから、「ストレスホルモン」とも呼ばれます。これには大切な働きがあって、瞬時に物事を判断し、適切に反応できる状態にしてくれるのです。

たとえば職場の誰かに無理な頼みごとをされたとき、NOと言える人のストレスホルモンの分泌量はぐっと上昇します。血糖値が上がり集中力が高まるため、「今は忙しいのでできません」という判断が瞬時にできます。露骨に顔や態度にも出るので、相手に「あ、嫌なのね」と伝わりやすいメリットも。(笑)

ところが断れない人は、このホルモンの分泌が不安定。周囲に気を使って常に緊張状態にあるなどの理由からストレスホルモン値が慢性的に高く、いざというときに「ぐっと上昇」しないのです。逆に困った状況になると値が下がってしまうことも多く、曖昧な表情でニコニコしているうちに、「じゃあお願いね」と厄介ごとを押し付けられる羽目になりかねません。

一方で、断れない人は想像力ゆたかで気が回る人でもあります。先々を心配してあれこれ手を出してしまうため、周囲は「あの人に任せておけば安心」とどんどん甘えてくる。口では感謝しながらも、「何でも言うことを聞く人」と軽んじられている可能性もあります。

そうした厄介なしがらみを断つには、少しずつでも「NOと言う」練習を積み重ねるしかありません。人間関係のストレスが軽減されれば、ストレスホルモンの分泌も安定し、その時々にふさわしい判断ができるようになります。そのための考え方やコツを以下に紹介していきましょう。